古文の仮名の使い方は、現代文と異なります。
現代文の仮名遣いは、現代仮名遣いといいます。それに対して、古文の仮名遣いは、歴史的仮名遣いといいます。
歴史的仮名遣いには、「ゐ」「ゑ」などの仮名を使ったり、現代仮名遣いとは違った読み方をしたりする、という特徴があります。
〈補足〉
歴史的仮名遣いは、明治時代以降、現代仮名遣い(1946年)が制定されるまでに使われていた仮名遣いで、平安時代の中頃以前の表記を基準にしています。
【読み方】
歴史的仮名遣いの読み方は、基本的に6つのルールがあります。
1. 「ゐ・ゑ・を」は、「い・え・お」と読みます。
〈例〉
井戸(ゐど) → 井戸(いど)
声(こゑ) → 声(こえ)
男(をとこ) → 男(おとこ)
2. 「ぢ・づ」は、「じ・ず」と読みます。
〈例〉
恥(はぢ) → 恥(はじ)
静か(しづか) → 静か(しずか)
3. 「くわ・ぐわ」は、「か・が」と読みます。
〈例〉
菓子(くわし) → 菓子(かし)
門外(もんぐわい) → 門外(もんがい)
4. 助動詞「む・てむ・むず・けむ・らむ」や助詞「なむ」などの「む」は、「ん」と読みます。
〈例〉
女(をむな) → 女(おむな) → 女(おんな)
神無月(かむなづき) → 神無月(かんなづき)
5. 語頭以外の「は・ひ・ふ・へ・ほ」(は行)は、「わ・い・う・え・お」と読むことが原則です。
「は・ひ・ふ・へ・ほ」が語頭の場合は、そのまま読みます。また、複合語や派生語で、元の単語の語頭が「は・ひ・ふ・へ・ほ」(は行)の場合も、そのまま読みます。
〈例〉
思ふ(おもふ) → 思う(おもう)
上(うへ) → 上(うえ)
春(はる) → 春(はる) (無変化)
初春(はつはる) → 初春(はつはる) (複合語無変化)
6. あ段・い段・え段に「う」が続く場合は、「う」が長音化するため、前の仮名も変化します。
あ段 + う → お段長音
い段 + う → ゅう ([例外] いう → ゆう)
え段 + う → ょう ([例外] えう → よう)
〈例〉
申す(まうす) → 申す(もうす)
美しう(うつくしう) → 美しゅう(うつくしゅう)
調子(てうし) → 調子(ちょうし)
「う」の代わりに「ふ」が続く場合も、同じように読みます。(「ふ」は語頭ではないので、ルール5によって「う」に変化します。)
〈例〉
扇(あふぎ) → 扇(あうぎ) → 扇(おうぎ)
急(きふ) → 急(きう) → 急(きゅう)